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よくあるご質問

Q付加金とは何ですか?

執筆者 弁護士 友弘克幸 (大阪弁護士会所属/西宮原法律事務所

付加金とは

付加金(ふかきん)とは、労働基準法で支払いが義務づけられている割増賃金などを支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、裁判所が(割増賃金やその遅延損害金とは別に)追加して支払いを命じることができる金銭のことです(労基法114条)。

具体的には、未払いとなっている割増賃金が100万円のケースであれば、裁判所は、最大100万円までの範囲で、「付加金」の支払いを使用者に命じることができます。

使用者からすれば、本来の未払い額の2倍の支払いを命じられる可能性があるわけですから、大変「怖い」制度といえます。

なお、付加金の対象となるのは労基法上の割増賃金だけです。法内残業に対する残業代(詳しくはこちら)については裁判所は付加金を命じることはできないとされていますので、注意してください。

 

付加金制度の趣旨

最高裁判所の決定によれば、付加金制度の趣旨は、

①労働者の保護の観点から、割増賃金などの支払義務を履行しない使用者に対し、一種の制裁として経済的な不利益を課すこととし、その支払義務の履行を促すことにより上記各規定の実効性を高める

②使用者による割増賃金等の支払義務の不履行によって労働者に生ずる損害の塡補を図る

という2点にあるとされています(最高裁平成27年5月19日決定・判例タイムズ1416号61頁)。

付加金制度の趣旨については学説上は様々な議論がありますが、とりあえず、割増賃金などをきちんと支払っていなかった使用者に対するある種の制裁(ペナルティ)だと考えておけば良いと思います。

 

付加金請求には期限がある

付加金の請求は、違反(割増賃金の不払い)があったときから3年以内にしなければなりません(労基法114条ただし書、附則143条2項)。

やや専門的になりますが、付加金の3年という期限は消滅時効ではなく除斥期間ですので、催告による時効の完成猶予(民法150条)の規定は適用されません。したがって、付加金の支払いを求めるためには必ず訴訟提起を行う必要があります。

なお、(さらに専門的になりますが)、付加金の支払いを命じることができるのは「裁判所」だけですので、労働審判を行う「労働審判委員会」が付加金を命じることはできません(労働審判法20条)。にもかかわらず、実務上は、労働審判申し立てのときに付加金の支払いを請求しておくのが通例です。というのは、労働審判に対する異議が申し立てられると、その労働審判の申し立てのときに訴えの提起があったとみなされるため(労働審判法22条1項)、「3年以内に請求」の要件を満たしておくために、労働審判申し立ての時点で付加金請求をしておくほうがよいケースが多いからです。

 

付加金支払いを命じるかどうかは裁判所の裁量

割増賃金の不払いがあると認められる場合であっても、付加金の支払いまで命じるかどうかは、裁判所の裁量に委ねられています。このため、裁判所は割増賃金の不払いとなった具体的事情や使用者側の悪質性の程度を考慮して、付加金の支払いを命じるかどうかを判断しています。

たとえば東京地裁令和元年5月31日判決・労経速2397号9頁(三村運送事件)は、「付加金の支払いを命じるべきか否か及び命ずるとした場合の金額を決定するに当たっては、使用者による労基法違反に至る経緯、その違反の内容や程度、労働者の不利益の内容や程度等の諸般の事情を総合的に考慮すべきである」と述べています。

この結果、事案ごとの個別の事情により、割増賃金の不払額と同額の付加金支払いが命じられることもあれば、まったく付加金の支払いが命じられないこともあります。

また、労基法114条の条文上は「未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる」と書かれていますが、例えば「未払いの割増賃金の5割相当額の付加金の支払いを命じる」といった例(東京地裁令和4年6月1日判決・労経速2502号28頁など)もあります。

 

執筆者情報

弁護士 友弘 克幸(ともひろ かつゆき)

1979年大阪生まれ、京都大学法学部卒業。

大学在学中に司法試験に合格し、司法修習生を経て、2004年に弁護士登録(大阪弁護士会)。

以来、不当解雇・残業代請求など、主に労働者側で多数の労働事件を担当している。

2018年4月、労働調査会より「よくわかる未払い残業代請求のキホン」を出版。

2019年10月~2021年10月、大阪労働者弁護団の事務局長を務める。

2020年4月から5月にかけて、5回にわたり、朝日新聞の「コロナQ&A」コーナーにて、コロナウイルス感染症の感染拡大にともなって生じる労働問題に関してコメントが掲載された。

また、「労働法について多くの方に知ってもらいたい」との思いから、一般の方々、労働組合・社会保険労務士・大学生等に向けて、労働法や「働き方改革」について多数の講演を行っている。

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