よくあるご質問

システムエンジニア(SE)は残業代を請求できますか?

できる場合があります。

(解説)

「システムエンジニア(SE)」として働いている方の中には、きわめて長時間働いているにもかかわらず、残業代が支給されていない、あるいは、本来の金額よりもはるかに少ない金額しか支給されていない方が少なくないようです。

しかし、結論から言うと、それは「会社にだまされている」可能性があります。

 

SEの残業代は、専門業務型裁量労働制(労働基準法38条の3) という制度と関わりがあります。

専門業務型裁量労働制(「専門職の裁量みなし時間制」などと呼ぶこともあります)とは、新商品・新技術の研究開発など、専門性や創造性が高いとされる業務について、実労働時間による算定の原則を外し、所定労働日の労働時間を労使協定で定めた「みなし時間」で算定することができるという制度です。

要するに、労使協定で、「あらかじめ1日に8時間働いたものとみなす」と決めておけば、実際に働いた時間が10時間であろうが、3時間であろうが、「8時間働いた」として扱えるのだ、という制度です。

 

法律上、この制度を適用できる職種は、きわめて限定されています。

たとえば、「大学の研究者」はOKです。

研究者は、形式上、大学に「雇用」されていますが、基本的に、大学から「あれをしろ、これをしろ」と指示されることはありません。

仕事の中心は「研究」ですから、仕事の成果は「いかに優れた内容の研究をしたか」によって評価するのが適切なことが多く、「研究室に何時間いたか」ということで評価するのには馴染みません。

したがって、研究室にいた時間が1日1時間だけであっても、24時間研究室に寝泊まりして研究に没頭していたとしても、一律で「1日〇時間働いたものとみなす」と決めておくことには、合理性があると考えられているのです。

 

 

専門業務型裁量労働制の適用対象にできる業務の中には、「情報処理システムの分析または設計の業務」というものが定められています(労働基準法施行規則24条の2の2第2項、第2号)。

多くの会社では、これを根拠として、「SEにはみなし労働時間制を適用する」としているのです。

しかし、上で述べた「研究者」の働き方をイメージして頂ければ分かるとおり、「情報処理システムの分析または設計の業務」として予定されているのは、本来、業務を進める上で上司や会社からあれやこれやと指示を受けることがほとんどない(業務遂行についての裁量が大きい)ような仕事のことなのです。

営業など本来のSE業務以外の業務もこなしつつ、SEとしては上司や会社に指示された仕事を納期に追われながら必死になって処理しているだけ、というような働き方では、「裁量の大きい働き方」とは言えませんし(京都地裁H23.10.31・エーディーディー事件参照)、単にプログラムの設計・作成を行っているだけの労働者(プログラマー)も、SEとは言えません(平成6年1月4日基発第1号)。

このような「名ばかりSE」であれば、たとえ形式的に「裁量労働制」の形態をとっていたとしても、労働時間の「みなし」効果は発生しませんので、実際の労働時間に基づいて計算した割増賃金(残業代)を請求できることになります。

 

また、専門業務型裁量労働制の導入には、手続面でも厳格な手続が要求されています(くわしくはこちら)。

そのような手続を満たしていなければ、やはり、労働時間の「みなし」効果は発生せず、実際の労働時間に基づいて計算した割増賃金(残業代)を請求できることになります。