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よくあるご質問

Q残業代請求したいが証拠がない場合はどうすればよい?

執筆者 弁護士 友弘克幸(西宮原法律事務所)

【大阪弁護士会所属。「残業代請求専門サイト」を運営しています。】

証拠はなぜ必要なのか?

残業代請求するためには、労働者側で「残業していたこと」を立証(証明)する必要があるというのが大原則です。

では、「残業代請求をしたいが、証拠がない」という場合にはどうすればよいのでしょうか?

 

実際は「会社側に証拠がある」ことが多い

「証拠がない」といっても、実際には、「自分の手元に証拠がない」だけで、「会社側には証拠がある」という場合が少なくありません

一例として、残業を証明する際の最も典型的な証拠である「タイムカード」を例に考えてみます。

 

すでに退職してから弁護士のところにご相談にお見えになるケースでは、

タイムカードは打刻していたが、手元には、コピーも写真もありません

と言われるケースがほとんどです。

このような場合は、たとえば「日常的に、少なくとも平均1日2時間程度は残業していた」といったような形で、大まかな残業時間を前提として残業代を計算し、使用者側に請求します。

そして、その請求の際に、「正確な金額を計算するため必要である」として、タイムカードの開示を要求すれば、多くの使用者(会社)は開示してきます。

なお、使用者は、タイムカードなど実労働時間の把握のために必要な資料を、「賃金その他労働関係に関する重要な書類」として、最低でも5年間(ただし、経過措置として当面の間は3年間)、保存しておかなければなりません(労基法109条、同附則143条1項労基法施行規則56条5号)。

 

裁判を起こし、裁判所を通じて証拠の開示を求めることも可能

万一、そのような方法で使用者がタイムカードを任意に開示しないのであれば、裁判を起こします。

残業代請求の裁判では、裁判官自身がタイムカードを重要な証拠として重視していますので(このことは、裁判官らが執筆した「労働事件審理ノート」第3版130頁にも記載されています。)、タイムカードが「ある」ことさえ分かれば、裁判官自身が会社側にその開示をうながすことがほとんどです。

そして、裁判官からタイムカードの開示を求められれば、使用者側がそれを拒むことはほとんどありません。拒んだとしても、最終的には「文書提出命令」によって提出を命じられる可能性が高いため(※)、「証拠を出す・出さない」というレベルで争っても、使用者には実益がないと考えられるからです。

※使用者が裁判所の「文書提出命令」(民事訴訟法220条)によってタイムカードの提出を命じられた最近の例として、東京高裁令和4年12月23日決定・労経速2512号18頁(JYU-KEN事件)があります。

 

なお、以上はタイムカードを例に説明しましたが、それ以外の資料(「業務日誌」「週報・日報」「勤務シフト表」など)についても、多くの場合、基本的な対応は同じです。

会社業務の中で日常的に作成されており、それを見れば残業の実態が分かるような資料であれば、会社側に任意の開示を求めたり、裁判を起こしたあと裁判官から開示を促してもらう、といった方法で入手できるケースがほとんどです。(ただし、法令によって保存が義務づけられていない資料の場合には、作成後3年を待たず、古いものから順に廃棄されているという場合もあるため、その点は注意が必要です。)

※最近の事例として、タイムカードを導入していなかった飲食店で、スタッフが出勤・退勤・休憩の開始と終了の時刻を手書きしていた書類を用いて給与計算が行われていたという事案について、そのような文書は「労働関係に関する重要な書類」(労基法109条)にあたり、会社側が5年間の保存義務を負っているとして、文書提出命令を発した事例(東京地裁令和5年8月4日決定・労経速2530号20頁)があります。

 

証拠が改ざん・隠匿される恐れがある場合の対策

実例はそれほど多くありませんが、証拠が会社側にあり、しかも、改ざん・隠匿される恐れがあるような場合には、別途の対応を検討する必要があります

上で述べたように、通常は、交渉の中で任意に資料を開示したり、裁判で裁判官から促されれば任意に資料を提出する使用者がほとんどなのですが、悪質な使用者であれば、資料の提出に応じないばかりか、裁判が起こされると知るやいなや、資料を廃棄・改ざんする恐れがあるといったケースもまったくないわけではありません。

そのような場合には、民事訴訟法で定められた「証拠保全(しょうこほぜん)の申立て」(民事訴訟法234条)という手続きを活用して、廃棄・改ざんの前に資料を保全しておくという方法をとることになります。

詳しくは別の記事に書きましたので、詳しく知りたい方はそちらを参照してください。

 

本当に「証拠がない」のか?

以上のように、「証拠がない」といっても、「会社側に証拠がある」というケースでは、取りうる手段は色々とあります。

では、「会社側にも証拠がない」場合は、どうするのか。

実は、「証拠がない」といっても、たとえば、ご家族とのLINEのやりとりで、毎日、帰宅時に連絡をされているケースもあります。手帳にメモをされているケースもあるでしょう。そのようなものも、内容次第では、証拠となる可能性があります。また、最近では、スマートフォンのアプリに、行動の履歴が残っている場合もあるようです。

タイムカードのような典型的な証拠はないとしても、実際に残業をしていた以上は、何らかの「痕跡」が残っている可能性はあるはずです。

ですから、本当に、「証拠がない」のか、もう一度よく考えてみる必要があるでしょう。

具体的にどのようなものが証拠となりうるのかについては、別の記事を参照してください。

 

いずれにせよ、実際に残業をしていたのに、初めから「証拠がない」と言って、残業代請求をあきらめるのはあまりにももったいないと思います。

まずは、弁護士にご相談いただきたいと思います。

 

執筆者情報

弁護士 友弘 克幸(ともひろ かつゆき)

1979年大阪生まれ、京都大学法学部卒業。

大学在学中に司法試験に合格し、司法修習生を経て、2004年に弁護士登録(大阪弁護士会)。

以来、不当解雇・残業代請求など、主に労働者側で多数の労働事件を担当している。

2018年4月、労働調査会より「よくわかる未払い残業代請求のキホン」を出版。

2019年10月~2021年10月、大阪労働者弁護団の事務局長を務める。

2020年4月から5月にかけて、5回にわたり、朝日新聞の「コロナQ&A」コーナーにて、コロナウイルス感染症の感染拡大にともなって生じる労働問題に関してコメントが掲載された。

また、「労働法について多くの方に知ってもらいたい」との思いから、一般の方々、労働組合・社会保険労務士・大学生等に向けて、労働法や「働き方改革」について多数の講演を行っている。

 

 

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