執筆者 弁護士 友弘克幸(大阪弁護士会所属/西宮原法律事務所)
始業時刻が9時、終業時刻が18時、休憩時間が1時間という労働契約(雇用契約)の場合、所定労働時間は8時間となります。
では、18時以降も徹夜で残業し、翌日の所定始業時刻9時も過ぎてそのまま働き、11時にようやく仕事を終えて退勤したという場合はどうなるのでしょうか。
18時~翌日9時の15時間が時間外労働となることは当然ですが、最後の2時間(9時~11時)はどのような取り扱いになるのかという問題です。
行政解釈(昭和28年3月20日基発第136号)では、前日の労働が継続して翌日まで及んだ場合には、翌日の所定労働時間の始業時刻までの分は前日の超過勤務時間として取り扱われますが、翌日の始業時刻以降は新たな勤務が始まるものとされています。
上記の例で言えば、翌日9時をもっていったん前日からの勤務は「終了」扱いとなるため、9時~11時の2時間は時間外労働とはならないということになります。
このような取り扱いは割増賃金制度の趣旨に反しているのではないか、と指摘されることもありますが、いちおう実務上は上記のように取り扱って計算するのが一般的です。
執筆者情報
1979年大阪生まれ、京都大学法学部卒業。
大学在学中に司法試験に合格し、司法修習生を経て、2004年に弁護士登録(大阪弁護士会)。
以来、不当解雇・残業代請求など、主に労働者側で多数の労働事件を担当している。
2018年4月、労働調査会より「よくわかる未払い残業代請求のキホン」を出版。
2019年10月~2021年10月、大阪労働者弁護団の事務局長を務める。
2020年4月から5月にかけて、5回にわたり、朝日新聞の「コロナQ&A」コーナーにて、コロナウイルス感染症の感染拡大にともなって生じる労働問題に関してコメントが掲載された。
また、「労働法について多くの方に知ってもらいたい」との思いから、一般の方々、労働組合・社会保険労務士・大学生等に向けて、労働法や「働き方改革」について多数の講演を行っている。