執筆者 弁護士 友弘克幸(大阪弁護士会所属/西宮原法律事務所)
たとえ、雇用契約書に「1日8時間を超える時間外労働をしても、残業代(割増賃金)は支払わない」などと書かれていたとしても、そのような契約に効力は認められませんので、残業代(割増賃金)は請求できます。
なぜなら、労働基準法は「強行法規(きょうこうほうき)」※であり、労基法が定める基準に達しない当事者間の合意(契約)は無効とされるからです(労基法13条)。
※ 強行法規とは、当事者の合意の有無・内容にかかわらず当事者を規律(拘束)する性格をもつ法規範のことをいいます。これに対し、当事者が必ずしもそれに拘束されない(それと異なる合意をすることも許される)法規範を「任意法規(にんいほうき)」と言います。
残業代の不払いは違法です。
契約書に「残業代は出ない」などと書かれていたとしても(あるいは口頭でそのように言われたとしても)、残業代不払いが合法になることはありませんので、悪質な使用者にごまかされないようにしていただきたいと思います。
執筆者情報
1979年大阪生まれ、京都大学法学部卒業。
大学在学中に司法試験に合格し、司法修習生を経て、2004年に弁護士登録(大阪弁護士会)。
以来、不当解雇・残業代請求など、主に労働者側で多数の労働事件を担当している。
2018年4月、労働調査会より「よくわかる未払い残業代請求のキホン」を出版。
2019年10月~2021年10月、大阪労働者弁護団の事務局長を務める。
2020年4月から5月にかけて、5回にわたり、朝日新聞の「コロナQ&A」コーナーにて、コロナウイルス感染症の感染拡大にともなって生じる労働問題に関してコメントが掲載された。
また、「労働法について多くの方に知ってもらいたい」との思いから、一般の方々、労働組合・社会保険労務士・大学生等に向けて、労働法や「働き方改革」について多数の講演を行っている。