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よくあるご質問

Q残業代請求することに、デメリットはありますか?

執筆者 弁護士 友弘克幸(西宮原法律事務所)

【大阪弁護士会所属。「残業代請求専門サイト」を運営しています。】

 

法律上は、基本的に「デメリット」はない

まず大前提として、労働者が未払いの残業代を請求することは、法律上認められた正当な権利です。

・「お金を貸したまま返してもらえない」場合に、貸した相手に「お金を返せ」と請求する

・誰かに殴られてケガをさせられた被害者が、加害者に治療費や慰謝料を請求する

ようなケースと同じです。

権利を持っている人がそれを行使するのは当たり前のことですから、少なくとも法律上は、基本的に不利益(デメリット)はありません。

 

事実上のデメリット?

しかし、そうはいっても、在職中に残業代を請求すると、事実上、何らかの不利益(デメリット)が生じるのでは・・・と心配される方もおられると思います。

これは、「デメリット」というよりは、事実上の「リスク」の問題と言ったほうが良いかもしれません。

 

在職中に未払い残業代を請求する場合には、具体的にどのようなリスクが考えられ、それに対してどのような対応が可能なのか、ということを知っておくことが大切です

以下、代表的な「心配事」を例に、法的な考え方と、考えられる対応策について解説します。

 

心配① 「残業代請求をしたら、解雇されるのではないか?」

法的な考え方 労働契約法(16条)で、解雇には「客観的に合理的な理由」が必要とされています。

「残業代請求をしたこと」は正当な権利行使であって、それが解雇の「合理的理由」にはあたらないことは明らかです。

つまり、仮に「残業代請求をしたこと」を理由に解雇してくるのであれば、それは明らかな不当解雇だということです。

対応策 在職中に残業代請求する場合には、あらかじめそのような不当解雇を行わないように弁護士から釘を刺しておくということも考えられます。

それでも雇い主が不当な解雇を強行してくれば、労働審判や訴訟を提起するなどして、①解雇そのものを撤回させるか、②退職を受け入れるのと引き換えに十分な補償金の支払いを求めてゆく、ということになるでしょう。

 

心配② 「残業代請求をしたら、報復人事(例:不当な配置転換・出向命令)を受けるのではないか?」

法的な考え方  使用者が配置転換に関する権限(配転命令権)を有している場合であっても、使用者は好き勝手な理由で配転を命じてよいわけではありません。

「残業代請求に対する報復」など、不当な動機・目的をもってなされた配置転換は「権利の濫用」にあたり、無効となる可能性が高いものです(労働契約法3条5項)。

出向命令についても同様です(労働契約法14条)。

対応策  在職中に残業代請求する場合には、あらかじめそのような報復人事を行わないように弁護士から釘を刺しておくということも考えられます。

それでも雇い主が報復人事を強行してくるようなことがあれば、労働審判や訴訟(場合によっては仮処分)などの法的措置をとって対抗するということになるでしょう。

 

心配③ 「残業代請求をしたら、仕事を干される/無視される といった嫌がらせを受けるのではないか?」

考え方  そもそも、「合理的な理由もないのに長期間仕事を与えない」「無視する」といった行為は、パワーハラスメントにあたります

パワハラをした直接の加害者(上司など)個人はもちろんのこと、パワハラの発生を放置した会社にも、損害賠償責任を追及できる可能性があります。

対応策  万が一、「残業代請求」をきっかけにパワハラが始まったというようなケースであれば、パワハラをやめさせるよう弁護士から会社に要求することはもちろんですし、場合によっては、パワハラによる精神的苦痛について、残業代とは別に慰謝料の支払いを請求することも考えられるでしょう。

 

それでも心配な場合には・・・

以上、代表的な「心配事」について、法的な考え方と対応策を書いてみました。

しかし、そうは言っても、「やっぱり心配だ」とお感じになるかもしれません。

残業代請求の場合、「お金を貸した・借りた」などの関係とは異なり、継続的な契約関係であり、退職するまでは毎日職場で上司や雇い主と顔を合わせるわけですから、そのようにお感じになるのも無理からぬ側面はあると私も思います。

また、いかに不当な解雇・配転・出向・パワハラであったとしても、それに対抗して労働審判や訴訟をしようとすれば、それなりに労力も必要になります。

したがって、事情によっては、在職中はあえて請求を行わず、退職後に請求することを選ばざるをえないケースもあるでしょう。

 

ただし、請求を退職後にする場合には、「時効」には注意が必要です。

未払い残業代の時効は3年とされていますから、残業代の不払いが長期間にわたって続いているようなケースでは、アクションを起こすのが遅れれば遅れるほど、時効によって「損」をする可能性が高まるからです。

 

結局のところ、残業代の未払いがある場合に、在職中に請求するのか退職後に請求するのかは、

・未払いとなっている期間の長さ(時効との関係)

・上司や社長のキャラクター

・会社の規模や社風

・一人で請求するのか、同僚らと一緒に請求するのか

・請求するあなた自身のお気持ち

などの様々な事情を勘案しつつ、最終決定することになるでしょう。

 

心配事があれば、弁護士に気軽に相談を

西宮原法律事務所では、残業代に関する無料相談を実施しています。

残業代を請求する上での「心配事」があれば、その内容も含めて遠慮なくご相談ください

「何が一番良い方法なのか」は、お一人お一人で違います。

弁護士は、「あなたにとって一番良い方法」を考えるお手伝いをさせていただきます。

ご相談はお気軽にメールフォームからお申し込みください。

 

執筆者情報

弁護士 友弘 克幸(ともひろ かつゆき)

1979年大阪生まれ、京都大学法学部卒業。

大学在学中に司法試験に合格し、司法修習生を経て、2004年に弁護士登録(大阪弁護士会)。

以来、不当解雇・残業代請求など、主に労働者側で多数の労働事件を担当している。

2018年4月、労働調査会より「よくわかる未払い残業代請求のキホン」を出版。

2019年10月~2021年10月、大阪労働者弁護団の事務局長を務める。

2020年4月から5月にかけて、5回にわたり、朝日新聞の「コロナQ&A」コーナーにて、コロナウイルス感染症の感染拡大にともなって生じる労働問題に関してコメントが掲載された。

また、「労働法について多くの方に知ってもらいたい」との思いから、一般の方々、労働組合・社会保険労務士・大学生等に向けて、労働法や「働き方改革」について多数の講演を行っている。

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