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よくあるご質問

Q固定残業代の残業時間に「上限」はあるか?

固定残業代とは

典型的な固定残業代とは次のようなものです。

①毎月の賃金(給与)として、基本給35万円のほか、業務手当5万円が支払われる。

②業務手当5万円は、時間外労働20時間分に対する割増賃金として支払われる。

 

固定残業時間の労働時間数に「上限」はあるか?

ところで、固定残業代の算定の基礎として設定する労働時間数(固定残業時間)に、「上限」はあるのか、という問題があります。たとえば、「月100時間」といった長時間を設定しても、固定残業代の定めとして有効なものと認められるのでしょうか。

この点については、理論的には(A)「固定残業時間が長時間であるとしても固定残業代の有効性には全く影響しない」とする考え方もあり得るところですが、(B)固定残業時間があまりにも長時間であることは、固定残業代の有効性を否定する事情として考慮される場合があると考えるべきでしょう。

なお、(B)のような判断を示す裁判例の理由付けには、次の2パターンがあります。

・固定残業代が長時間の時間外労働を想定していることは「公序良俗」に反するとするもの

例:東京高裁H30.10.4労働判例1190号5頁(イクヌーザ事件)

・固定残業時間が長時間である場合には、固定残業代が対価性を欠くとするもの

例:東京高裁H26.11.26労判1110号46頁(マーケティングインフォメーションコミュニティ事件)

100時間という長時間の時間外労働を恒常的に行わせることが上記法令の趣旨に反するものであることは明らかであるから,法令の趣旨に反する恒常的な長時間労働を是認する趣旨で,控訴人・被控訴人間の労働契約において本件営業手当の支払が合意されたとの事実を認めることは困難である。したがって,本件営業手当の全額が割増賃金の対価としての性格を有するという解釈は,この点において既に採用し難い。」

 

「働き方改革」の影響は?

ところで、2018年に「働き方改革関連法」が成立し、2019年4月1日(中小企業は2020年4月1日)以降は、36協定(さぶろくきょうてい)で許容できる1か月の時間外労働について、「原則として月45時間まで」「例外的に月45時間を超える場合でも、休日労働・時間外労働の合計は2~6か月平均で80時間以内でなければならない」などの上限が定められました(労基法36条4項)。

私見ではありますが、少なくとも、いわゆる過労死ラインである月80時間を超えるような時間を固定残業時間として設定することは明らかに不適切と思われますので、そのような長時間を設定する固定残業代の定めは無効と判断されるべきであろうと思います。

また、月45時間~月80時間を設定した場合の有効性についても、「働き方改革」以前に比べれば、裁判所の判断はより使用者に対して厳しいものとなる可能性が高いと考えています。

労働時間の上限規制と「固定残業代」との関係をどう考えるかについては、これからの裁判例の集積が待たれるところですが、長時間労働による過労死・健康障害を防ごうとした労基法改正(「働き方改革」)の趣旨は、十分に尊重される必要があるでしょう。

 

執筆者情報

弁護士 友弘 克幸(ともひろ かつゆき)

1979年大阪生まれ、京都大学法学部卒業。

大学在学中に司法試験に合格し、司法修習生を経て、2004年に弁護士登録(大阪弁護士会)。

以来、不当解雇・残業代請求など、主に労働者側で多数の労働事件を担当している。

2018年4月、労働調査会より「よくわかる未払い残業代請求のキホン」を出版。

2019年10月~2021年10月、大阪労働者弁護団の事務局長を務める。

2020年4月から5月にかけて、5回にわたり、朝日新聞の「コロナQ&A」コーナーにて、コロナウイルス感染症の感染拡大にともなって生じる労働問題に関してコメントが掲載された。

また、「労働法について多くの方に知ってもらいたい」との思いから、一般の方々、労働組合・社会保険労務士・大学生等に向けて、労働法や「働き方改革」について多数の講演を行っている。

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