執筆者 弁護士 友弘克幸(西宮原法律事務所)
【大阪弁護士会所属。「残業代請求専門サイト」を運営しています。】
残業代請求をする権利には、「時効」があります。
(請求する権利が消滅してしまうので、「消滅時効(しょうめつじこう)」と言います。)
具体的には、支払日(本来、その残業代が支払われるべきであった日)の翌日から3年が経つと、原則として、時効によって残業代を請求する権利は消滅します(労基法115条、附則143条3項)。
したがって、3年が経つまでに、時効の完成を防ぐための措置(例:裁判の提起、労働審判の申立てなど)をとる必要があります。
3年の期限が目前に迫っていて裁判を起こす準備が間に合わないような場合には、いったん、支払いを請求する意思表示(催告)をする(通常は内容証明郵便で行います)ことによって、時効の完成を一時的に阻止することもできます。ただし、その場合は請求(催告)してから6ヶ月以内に、さらに裁判の提起や労働審判の申し立てを行う必要があります。
ちなみに、2020年(令和2年)3月31日以前は、未払い残業代の時効は「2年」でした。
労働基準法の改正にともない、2020年(令和2年)4月1日以降、「3年」に変更されました。
詳しく知りたい方は、「残業代の時効が3年になったのはいつからですか?」をご覧ください。
また、将来的には、残業代の時効は「5年」となることが予定されています。
詳しく知りたい方は、「残業代の時効が5年になるのはいつからですか?」をご覧ください。
執筆者情報
1979年大阪生まれ、京都大学法学部卒業。
大学在学中に司法試験に合格し、司法修習生を経て、2004年に弁護士登録(大阪弁護士会)。
以来、不当解雇・残業代請求など、主に労働者側で多数の労働事件を担当している。
2018年4月、労働調査会より「よくわかる未払い残業代請求のキホン」を出版。
2019年10月~2021年10月、大阪労働者弁護団の事務局長を務める。
2020年4月から5月にかけて、5回にわたり、朝日新聞の「コロナQ&A」コーナーにて、コロナウイルス感染症の感染拡大にともなって生じる労働問題に関してコメントが掲載された。
また、「労働法について多くの方に知ってもらいたい」との思いから、一般の方々、労働組合・社会保険労務士・大学生等に向けて、労働法や「働き方改革」について多数の講演を行っている。