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残業代の請求方法

残業代の請求方法
(交渉、訴訟、労働審判)

1. いきなり裁判をするの?

残業代を請求する主な方法としては、大きく分けて、①残業代を支払うよう会社に請求し、支払ってもらう、②裁判所の手続(訴訟や労働審判)の2通りがあります。

当事務所では、残業代請求のご依頼を受けた場合には、特別な事情がない限り、まず、内容証明郵便を使って「残業代の支払いを請求する」と会社側に通知します。

内容証明郵便を使って請求するだけで、会社側が「残業代を任意に支払うので、話し合いで解決したい」と言ってくる場合も多くあります。裁判所の手続をとることなく解決できれば、費用のご負担も少なくなりますし(裁判所に納める印紙代などが不要になるため)、解決までの時間も短くて済むからです。

そのような通知をしても全く反応がない場合や、反応があったとしても「支払わない」という回答(ゼロ回答)である場合、納得できるだけの回答内容でなかった場合には、裁判所の手続(訴訟や労働審判)を検討することになります。

2. 訴訟か労働審判か?

裁判所で残業代の支払を請求する手続としては、「民事訴訟」と「労働審判」があります。
それぞれに特徴がありますので、当事務所では、事案の内容や依頼者様のご意向を踏まえて、いずれにするかを事案ごとに決定しています。

民事訴訟

民事訴訟のメリット

労働審判と異なり、裁判所で開かれる『期日』には弁護士だけが代理人として出廷すれば足りますので、依頼者様ご本人は、原則として期日に出廷する必要がありません。(当事者尋問や和解期日などのため、どうしても出廷をお願いせざるを得ない場合もありますが、依頼者様のご都合のつく日程で指定してもらうことになります。)

残業代請求で民事訴訟を利用すると、本来の未払い額のほかに、「付加金」の支払を受けられる可能性があります。付加金とは、使用者が労基法に違反して割増賃金などを支払わなかった場合に、いわば制裁(ペナルティ)として裁判所が支払いを命じる金銭のことで、最大で、本来の未払い額と同額の支払いが命じられることがあります(労基法114条)。つまり、使用者からすれば、本来の未払額は100万円なのに、裁判になれば、付加金100万円をプラスして、合計200万円の支払いを命じられる可能性があるということになります。
裁判所は、使用者の労基法違反の悪質性の程度などを考慮して「付加金」の支払いを命じるかどうかを事案ごとに判断していますので、判決になれば必ず命じられるというものではありませんが、使用者にとっては「敗訴すれば、本来の未払い額に加えて付加金のペナルティまで課せられるかもしれない」という制度であり、そのことが間接的に、和解による解決への動機付けとなる可能性があると言えます。

民事訴訟のデメリット

労働審判と異なり、期日の回数には制限がないため、解決までに要する時間が比較的長くなる可能性があります。(もっとも、訴訟でも、争点の数や会社側の姿勢によっては、比較的早期に和解できる場合もあります。)

労働審判

労働審判のメリット

労働審判は、もともと、残業代に限らず、解雇なども含め、労働紛争を迅速に解決するために導入された手続です。
このため、原則として「期日は3回まで」と決められており、訴訟に比べて短期間での解決が期待できるというメリットがあります。

労働審判のデメリット
当事者からの異議などにより、

訴訟に移行する場合がある
労働審判の場合、当事者間で解決内容について合意(調停)が成立すれば、労働審判手続は終了します。
他方、調停が成立しない場合、労働審判委員会(裁判官+2名の労働審判員)が「労働審判」を出すことになります。双方が「労働審判」を受け入れればそれで終了ですが、双方には「異議申立て」の権利が認められており、どちらかが異議申立てをすれば、訴訟に移行する仕組みになっています。
また、事件の内容があまりにも複雑であるなど、労働審判委員会が「この事件は労働審判手続きにはなじまない」と判断した場合には、審判委員会は「労働審判」をしないで手続を終了させることができます(労働審判法24条。いわゆる「24条終了」)。この場合も、訴訟手続に移行する仕組みになっています。
このように、せっかく労働審判の手続きを申し立てても、異議申立てや24条終了により、結局、訴訟手続に移行してしまうことがあるのです。

付加金の支払を受けられる可能性がない
労働審判手続においても、付加金の支払いを「求める」ことはできます。
しかし、付加金は労働基準法で、「判決により支払を命じられる」ものとされているため、労働審判において付加金の支払いが命じられることはありません。(少なくとも、裁判所はそのような解釈をとっています。)

まとめ

以上のように、労働審判・訴訟には、それぞれメリットとデメリットがあります。
当事務所では、事案の内容や依頼者様のご意向を踏まえて、いずれにするかを事案ごとに決定しています。

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