執筆者 弁護士 友弘克幸(西宮原法律事務所)
【大阪弁護士会所属。「残業代請求専門サイト」を運営しています。】
みなし労働時間制とは?
みなし労働時間制とは、一定の条件のもとで、実際の労働時間とは関係なく、一定の時間労働したものを「みなす」仕組みのことです。
この仕組みが適用される場合、例えば、実際に働いたのが3時間でも、10時間でも、あらかじめ定められた時間(例えば8時間)だけ働いたものとみなされます。
「実際に3時間しか働いていないのに、8時間働いたものとみなされる(8時間分の給料がもらえる)」という点だけを見れば労働者にとって嬉しい制度かもしれません。
ただ、逆に「10時間働いても8時間としかみなされない」という点を使用者から見ると、何時間働かせても残業代を払う必要がないため(ただし深夜労働・法定休日労働に対する割増賃金は除きます)、いわば「定額で働かせ放題」の制度とも言えますから、悪用されると過重労働の温床になりかない制度ともいえます。
したがって、労働基準法では、「みなし労働時間制」は、厳格な要件・規制のもとで、例外的に認められています。
法律で認められている「みなし労働時間制」は2種類
労働基準法で認められている「みなし労働時間制」は、次の2種類です。
それぞれの詳しい内容は、別のところで解説しています。
(1)事業場外労働のみなし労働時間制 →「外回りの営業職でも残業代を請求できますか?」
(2)裁量労働のみなし労働時間制 → 「裁量労働制でも残業代を請求できますか?」
注意点:「みなし」の効果は労働時間の「長さ」だけ
「みなし労働時間制」が適用される場合でも、あくまで実労働時間の「長さ」が一定とみなされる効果しかありません。
したがって、休日労働や深夜労働をした場合には、それに対する割増賃金は発生します。
執筆者情報
1979年大阪生まれ、京都大学法学部卒業。
大学在学中に司法試験に合格し、司法修習生を経て、2004年に弁護士登録(大阪弁護士会)。
以来、不当解雇・残業代請求など、主に労働者側で多数の労働事件を担当している。
2018年4月、労働調査会より「よくわかる未払い残業代請求のキホン」を出版。
2019年10月~2021年10月、大阪労働者弁護団の事務局長を務める。
2020年4月から5月にかけて、5回にわたり、朝日新聞の「コロナQ&A」コーナーにて、コロナウイルス感染症の感染拡大にともなって生じる労働問題に関してコメントが掲載された。
また、「労働法について多くの方に知ってもらいたい」との思いから、一般の方々、労働組合・社会保険労務士・大学生等に向けて、労働法や「働き方改革」について多数の講演を行っている。